【編集者の頭の中第8回】今後、音声コンテンツは流行っていくのか?オーディオブックは没落、Clubhouseは残ると考える理由

「ボイステック」という分野をご存知でしょうか。

 

近年、既存の産業にテクノロジーをかけ合わせることでイノベーションを創出したり、新たな市場を開拓する「○○テック」という言葉をよく耳にします。

 

金融とテクノロジーをかけ合わせたフィンテック企業では、マネーフォワードに代表されるようにすでに上場を果たした企業も少なくありません。

 

今回話題にしたいボイステックとは、音声(ボイス)とテクノロジーを組み合わせた領域のことを指します。

 

具体的なサービス名を挙げると、Voicyやstand.fm、Clubhouseなどがその代表例です。

 

その中で、オーディオブックという分野がある。

 

オーディオブックとは「声の本」のこと。つまり、書籍のテキストを音読しているコンテンツのことです。

 

このオーディオブック、元々は目の見えない人に向けて開発された商品でした。

 

本を読みたいけど読めない人に対して、代わりに音声データで本を読んでもらう、「聞く読書」という体験を提供していたのです。

 

このオーディオブックサービス、日本国内だとAmazonのAudible(オーディブル)と、国内のベンチャー企業の株式会社オトバンクが提供しているaudiobook.jpの2つが有名です。

 

さて、このAudible(オーディブル)とaudiobook.jpの2つのボイステックサービス。今後成長の可能性はどれだけあるでしょうか。

 

結論を先に言えば、ボイステックの市場は日本国内においては今後そこまで伸びていかないと私は睨んでいます。

 

なぜか。

 

それは人々のコンテンツ一つあたりの消費時間の短さが関係しています。

 

一つ、わかりやすい例を挙げましょう。

 

漫才日本一を決めるM-1 グランプリのネタ時間は4分です。

 

最近のYoutube動画は概ね10分以内ですよね?

 

これに対し、連続ドラマは60分(正確にはCMを除けば約45分)、オーディオブックに至っては一冊を読み終わるのに10時間以上かかるのは当たり前です。

 

近年、一つのコンテンツを消費するのに耐えられる時間は急激に短くなっています。

 

先日、今の10〜20代の若者はNetflixなどの映画も倍速で見ることが話題となり、AbemaTVの人気番組「PRIME」でもその是非について取り上げられました。

 

コンテンツ本来の“間”が伝わらないなどの問題が指摘されていますが、この意見に対して現実的には「仕方がない」という声も少なくありません。

 

いま、私たちが生活する世界ではコンテンツの量が日々等比級数的に増えており、コンテンツの消費が追いつかない状況になっているからです。

 

そんな中で、「10時間もひとつのコンテンツに向き合っている暇などない」というのが消費者の本音ではないでしょうか。

 

Tiktokが30秒でコンテンツを完結させている時代に、夜行バスの移動時間のような10時間以上聴かなければ内容が理解できないオーディオブックのようなコンテンツはあまりにも時間のシェアを奪うという意味で不利なのです。

 

そこでヒントとなるのが“小分けにする”という考え方です。

 

仮に60分の動画を見てくださいとお願いしたときに、それが1時間のドキュメンタリー番組なのか、10分のYoutube動画を6本見てもらうかでコンテンツを飽きずに見てくれる人の割合は大きく違うのがいまの社会なのです。

 

この「ユニットを小分けにする」という戦略(というかコンテンツを消費してもらうための解決策)はスマホ時代のあらゆるコンテンツビジネスのヒントになります。

 

テレビ番組でも、「有吉の壁」や「千鳥のクセがすごいネタGP」など、1分程度の短いネタをポンポンと出していく番組が増えています。これはスマホ普及によるコンテンツ消費の変化の影響を受けていることは間違いありません。

 

しかしその一方で、ボイステック音声メディアとして上半期話題となったClubhouceのように、ゆるく、いつでも離脱できる、ほかの作業をしながら聞けるサービスは長尺でも耐えられるものになっています。

 

その理由はライブ配信だからでしょう。

 

「少し聞き流しもいいや」というユーザーの気持ちはラジオと通底するものがあります。

 

ライブ配信の本質は、同じ時間を共有しているという共時性です。

 

そのため、今回取り上げたオーディオブックとは本質的に提供している価値が異なるものです。

 

ゆるく聞けるライブ配信が残り、ガチで何時間も聴き入らなければならないオーディオブックは伸び悩む。

 

それがボイステック市場に関する私の見解です。