21.04.20

プレスリリース 

広報戦略の“ムダな仕事”についてーー“驚き”と“新規性”のない情報発信は、むしろ損をしますーー

◆「とりあえずプレスリリース」の罠

 

「自社の取り組みを発信していないこと」の弊害はこれまで縷々述べてきましたが、その“発信”のもっとも取り組みやすい手段として、プレスリリースが挙げられていることはメディアクラブ会員の方ならば周知の事実かと思います。

 

しかし、プレスリリースは「書けばよい」というものでもありません。

 

これまで、メディアクラブで100枚以上のプレスリリースを編集、添削してきた私が正直に述べますと、残念ながら、そのほとんどがニュースバリューにならないものです。

 

言い換えれば、プレスリリースを書いても雑誌にも番組にも取り上げられないのです。

 

それでも、「アウトプットは必要だ!」というスローガンを掲げて、根性でプレスリリースを出し続けることは果たして最適な広報戦略でしょうか。

 

残念ながら、それは懸命な手段でないばかりか、むしろ自社に損失をもたらす危険性を孕んでいることを本稿では説明いたします。

 

◆「驚きのない情報」を読まされる記者の気持ちを考えたことはありますか

 

多くの企業が新規事業をスタートさせたり、新商品を発売するタイミングでプレスリリースを打つと思います。

 

これは、それらの取り組みや商品を世の中に知ってもらうための手段として至極当然のことでしょう。

 

また、プレスリリース配信サイトはほとんどが検索上位に位置するため、SEO対策としても効果的でしょう。

 

しかし、その“発表”がそのまま雑誌やテレビからの取材につながるとは限りません。

 

それがどんなに新しい取り組みでも、メディアが考える「おもしろい」の文脈に乗らなければ取材価値がないと判断されるからです。

 

ひとつ例を挙げましょう。

 

「コロナ禍でも売上が前年同月比2倍で好調であること」をメディアにアピールする企業があったとします。

 

たしかに、それは自社にとってはとても重要なニュースでしょう。

 

一方、メディア関係者は、こうした事実を自社の媒体で報じる価値はどこにあるのかを考えます。

 

たしかに、コロナで世間が翻弄された2020年の4月のニュースならば、それは大いに取り上げる価値があったと思います。

 

しかし、今やそのような企業は珍しくなく、メディアで取り上げるほどの卓越性は見いだせません。

 

むろん、ユニクロやトヨタのような大企業ならば売上が倍増していることによる日本経済にもたらすインパクトは計り知れませんので、ニュース番組で報じる価値は大いにあると判断されるでしょう。

 

しかしながら、ユニクロのような市場インパクトのない企業の業績発表はそれ自体ではニュースになり得ないのです。

 

そしてこれは、自社で独自に調査した「アンケート結果の発表」も同様です。

 

近年、自社でシンクタンクのような機関を設け、業界内に関することや、顧客動向に対して市場調査した結果をプレスリリースとして発表する企業は少なくありません。

 

アンケート調査それ自体はまったく自然な取り組みだと思います。

 

が、ここからが問題です。

 

そこでなされるアンケート項目や調査内容が取材する価値のある「新規性」を帯びていたり、それを調べてほしかった!と思うような「もともと関心のあったもの」でない場合、その調査はまったく取材価値のない情報と判断されてしまいます。

 

特に危険なのが、調査時点で回答結果が予測されていることをわざわざ調査するケースです。

 

いわゆる「驚きの結果」をメディアの記者に送れば、そのプレスリリースを読む時間が記者にとっては単なるムダな時間と判断されるだけです。

 

そればかりか、その企業は「つまらない当たり前の事実を、わざわざリサーチコストをかけて発表する企業だ」と悪いイメージで記憶されてしまうのです。

 

単なる顧客調査や業界動向を知るためのアンケート調査ならば実施して構いませんが、それをメディアに送るべきかは、その内容が「おもしろい結果が出ているか」か「おもしろい質問をしているか」という視点で吟味してからにすべきでしょう。

 

一口で言えば「読む人の気持ちを考えましょう」ということに尽きます。

 

◆「おもしろい調査」とは何か

 

ここで、こんな疑問が生まれるでしょう。

 

「では、おもしろい調査結果ってなんですか?」

 

それについては、既存のニュースサイトを検索してみればヒントを得ることができます。

 

特に、日経新聞が報じる記事にはアンケート結果を報じるケースが少なくないので、日経新聞の電子版を読み込んでどんな調査結果が出ているのかを判断してみてください。

 

ここにいくつか例を挙げます。

 

・花束、家庭向け健闘 昨年、巣ごもり需要で国産花の茎「長さ」変えるか
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODJ3066R0Q1A330C2000000/
→巣ごもり需要として花束需要が増加。ではどれくらい増えてるの?という調査結果。おもしろいです。

 

・調査で判明、マーケターの実像 コロナで予算は2極化
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFK303AU0Q1A330C2000000/
→コロナ以降のマーケティング予算の調査結果。どうなっているか、気になりませんか?

 

・オンライン授業で「課題地獄」 友人つくれず孤独感も
https://style.nikkei.com/article/DGXZZO70730130W1A400C2000000
→今年から対面授業に移行した大学はおよそ6割。先進諸国と比べると日本は学生に課す宿題について大きな課題があったようです。これは今後の市場が成長する分野がどのようなものか判断できる「考察のきっかけを提供するアンケート結果」と言えます。

 

また、ciniiなどの論文検索サイトで自社の業界と親和性のある最新論文をタイトルだけ拾ってみるだけでも何が今現在価値の高い情報か判断できるでしょう。

 

プレスリリースを出す前に重要なことは、こうした“市場調査”なのです。

 

花束、家庭向け健闘 昨年、巣ごもり需要で

www.nikkei.com

 

調査で判明、マーケターの実像 コロナで予算は2極化

www.nikkei.com

 

オンライン授業で「課題地獄」 友人つくれず孤独感も|出世ナビ|NIKKEI STYLE

style.nikkei.com