【編集者の頭の中第3回】私たちの生活に馴染んだ“UX”が、意外なところまで浸透している事実を、霜降り明星と「有吉の壁」から学ぶ(後編)

今回は、前回の記事の続きになります。

 

前編では、私たちの生活はUXに支配されており、そのUXは日々変化するものであるということをお話しました。

そして、時代の“正解”といえるUXを提供したサービスは、人々の心をつかんでヒットコンテンツになりやすいという話を今日はご紹介したいと思います。

まず、いまの時代(2020年)において人々はどんなUXを求めているのか、端的に説明します。

 

一口で言えば、いまの時代は「TikTok的に情報を摂取したい世の中」になっています。

TikTokについては、今さら説明不要でしょう。

音楽に合わせて一本15秒の動画(一部は最大60秒)を投稿する中国のIT企業Bytedane社が手掛けるSNSです。

最近は米国や日本でサービスが禁止されるのではないかという報道も出ており、知名度も急上昇しています。

しかしこれは、言い換えれば中国発のアプリがそれだけ世界的に影響力を与えている証拠とも言えます。

 

では、TikTokはなぜここまで広まったのでしょうか。

かわいい女の子が音楽に合わせて口パクで踊る「リップシンク」と言われるコンテンツが流行ったからという説明もできますが、ここで重要なのは、そのコンテンツの長さと量です。

TikTokはわずか15秒のコンテンツです。言い換えれば、15秒で完結している動画でなければいけません。

そして、スマホ画面上で縦にスワイプするとポンポンっと動画が次々に変わります。

少しおもしろかったら見続けるけど、つまらなかったり興味がなければ次(=下)にいく。

それがTikTokのUX(User User Experience)です。

 

このようなUXが受けている理由は、人々が下記の消費体験を欲しているからです。

1・端的に、短くコンテンツを享受したい
2・たくさんの種類のコンテンツを大量に享受させてほしい

たとえば、10分暇な時間があったとしましょう。

もしYou Tubeを開いた場合に見れる動画は1本でしょう(概ね10分前後が多いため)。これに対し、TikTokならば20〜30本の動画を見ることができます。

 

◆TikTok的なコンテンツが流行っている根拠

いま、TikTokの2つのUXの特徴を踏まえたコンテンツが、世の中を席巻しているのです。

それが、お笑いコンビ霜降り明星と、日本テレビの番組「有吉の壁」です。

この2つは、とてもTikTok的なUXになっています。

 

まず、霜降り明星がM1グランプリ2018で優勝したときのファーストラウンドのネタを見てみてください。
(URLはここでは貼れないので、You Tubeなどで「霜降り明星 M1」で検索して見てみてください)

「お金持ちになったら豪華客船で世界一周したい」というネタです。

ここで、ボケのせいやは理想の豪華客船の船内を実際に身振り手振りをつかってボケの粗品に説明します。

するとすぐにあることに気づくと思います。

せいやは、わずか10〜15秒のあいだにボケて、ツッコミの粗品はそれに対して次々観客のほうを向いて突っ込んでいく。

なにより重要なことは、それぞれのボケが独立していることです(豪華客船内という設定はあっても、物語調になっていない)。

そのため、この動画を40秒目で見ても、55秒目で見ても、前後を見てなくても笑えるのです。

 

この霜降り明星の「独立したボケ」を複数ポンポンっと次々に投げていく構造(UX)は、きわめてTikTok的です。

まるでスマホ画面を縦にスワイプしていくようにボケが次々変わっていくので、観客は「飽きずに」「大量に」せいやのボケを見続けられるのです。

そう、霜降り明星のネタはおもしろいというのはもちろんですが、UXが極めて現代的だったのです。

 

そして、これは日本テレビで放送されている「有吉の壁」も同様です。

こちらもURLは貼れませんので、動画を検索してみてください。

この番組は、司会の有吉弘行さんが、としまえんなどの遊園地やサンシャインなどロケ地を歩いている間に、さまざまな芸人が登場して次々10〜20秒ほどでボケていき、それをその場で「合格」か「不合格」かを判断していく“だけ”の番組です。

 

こちらも、霜降り明星のネタと同様に番組をどのシーンから見ても笑えるものになっています(それぞれの芸人のネタは独立しており、また複数回同じ芸人が出てきても毎回違うネタをすることが多い)。

結果として、短時間でオチがあり、ぽんぽんと大量に芸人のネタを見ることができる。

UX的に、極めてTikTok的なのです。

 

さて、話が長くなりましたが、今回のテーマについてまとめます。

今、私たちがなにかコンテンツを提供するときは、こうしたUXのトレンドを把握しておきましょう、というのが本テーマで私が伝えたいことです。

10〜20秒の短時間で結論があり、豊富なコンテンツを用意すること。

それがいまPR施策としてアウトプットするときに人々に慣れ親しんでもらいやすいことをぜひ霜降り明星と「有吉の壁」から学んでいただければと思います。

 

 

 

鈴木俊之(編集者/メディアコンサルタント)

 

◆Profile
1985年福島県生まれ。学生時代よりライター活動を開始。大学卒業後、出版社にて裏社会、犯罪、事件誌の編集記者を経て2015年よりフリーランスとなる。「週刊SPA!」(扶桑社)、「PRESIDENTオンライン」(プレジデント社)など大手出版社で編集者として活躍。現在は主に総合週刊誌、ビジネス誌のほか、ネットニュースの編集、オウンドメディア運営にも携わる。専門分野は、ベンチャー、金融、不動産、人材、美容、婚活など。